悲観的アジア経済論トップ

21世紀はアジア太平洋の時代か

 ”21世紀はアジア太平洋の時代になる”ということが言われるようになってから久しい。それは1984年に太平洋貿易が大西洋貿易を凌駕し、この地域における経済活動が年々活発になっているからである。

 アジア太平洋地域の経済において重要な役割を果たしているのは米国と日本である。米国では産業の中心が東部大西洋側のスノウベルトから西部太平洋側のサンベルトへ移っている。日本では1985年のプラザ合意から製造業がアジアの低廉な労働力を求めて生産拠点を移している。基本的には、これらの動きがアジア太平洋地域の発展を支えている。

 しかし、これらの動きは手放しで評価できない。このような方法による経済成長は必ずしも現地に住む人々に利益をもたらさない。第2次大戦後のアジア太平洋地域は、日本を含む大半の国々が米国の前線防衛諸国として発展してきたからである。日本も前線防衛諸国の1つであったが、高度経済成長を達成したため、日本のアジア地域への賠償等を係わらせながら、日本に米国のアジア戦略を補強する役割を担わせた。そのため、アジア地域は他の地域よりも資金に恵まれ、今日の発展の基礎を作ることができた。

 このように今日のアジア太平洋地域の発展は現地の人々が一致団結して達成したというものではない。また、それに重要な役割を果たしている米日政府と企業は現地の人々のために活動をしているわけではない。彼らがいう自由貿易は強者の論理であり、国際分業とは米日を中心とした経済システムに他のアジア太平洋諸国を組み込み、非自立的で従属的な国民経済とする新植民地主義的な性格を有している。また、自由競争を旨とした経済システムは、しばしばその経済システムを支える人々を疎外する。それをいくらか回避する手段として、民主主義が機能することをあげることができるが、アジアの多くの国々が未だ非民主的であり、開発至上主義であるためそれを期待するができない。アジア太平洋地域はこれらの問題の解決なしには、例え更に経済成長を続けたとしても、又は続けるほどに大きな破綻を迎えることになるかもしれない。アジア太平洋地域は輝かしい未来が待っているわけではない。


目次